あぽろんのブログ

【ヘルシェイク矢野】のギター製作秘話2-『AC-bu | MoBA-現代美術館展』用アートピースの製作

#ヘルシェイク矢野 #ポプテピピック #ボブネミミッミ #AC部 #除夜のギター

AC部安達さんから「もっと、完全に紙芝居イラスト通りのギターが作れませんか?」というとんでもない難題が!!出されたその瞬間、衝撃と驚き、悦びと興奮を同時に覚えました。安達さん独特の、あの渋く落ち着いた声でぼそっと出た問いの言葉は、その印象とは裏腹に、心象は非常に力強い要求であると同時に、試しでもあると捉えました。

ちょっと無茶な要求ほど燃えるものはありません。「えっ?(笑)」と発しながらも、「やれますよ!」と即答しました。そんな無茶で前代未聞のことは、現実的な苦労を想像してから返答するものではありません。やると決めてしまってから考えないと実現させられないものです。これはまた、AC部とのコラボレーションでアート作品を製作できるという、限られた者だけに与えられる又とない機会であるという点と、「ちょっと面白い楽器店あぽろん」でしか実現できない事を世に対して表現できるという点において悦びでもあります。

当社は創業50年の中で、各方面の様々な方々と関わってきました。その中にはそれぞれの分野の匠として、知る人ぞ知る達人がいらっしゃいます。今回真っ先に浮かんだのは、当社とは長く深い付き合いのiml design studiosの伴さんです。彼は、新潟のアパレル、飲食、美容院、店舗、住宅などのデザイン、内装、インテリアの製作やコーディネイトから町おこしのコンサル的なアドバイスもできる正に知る人ぞ知る新潟の達人の一人です。実は彼は当社現社長が入社したばかりの頃にはとんがった学生バンドをやっていたお客さんであり、一時期一緒に働いたこともあります。よって、あぽろんの歴史も、ずっと「ちょっと面白い」こと?をやっていることも熟知してくれており、又、ギターについての知識もある、まさに適材です。社長とも信頼関係があり、今回のこの様な突拍子もないお題にも真剣に付き合ってくれるだろうという確信がありました。というより、このような想像力と調整力が必要とする仕事を受けられるのは彼しかいなかったでしょう。

伴さんとの最初のミーティングでは、「AC部は現代アートである」という自論を伝えた上で、今回のコラボレーションについて話し、これはぜひ実現したいプロジェクトであり、伴さんとでしか実現できないと力説しました。彼に引き受けてもらわないとできないものであるため、逃がさないように説得しました。なぜなら、これは単なる立体造形ではなく、楽器としてのギターとして作動する、弾けて音が出てる構造を組み込んだ、インスタレーションも可能なアートピースにしようと目論んでいたからです。あの衝撃的な【除夜のギター】も含めて!

紙芝居のイメージを見ながら、この異様な造形と、具体的な構造をどうやって融合させるか、材質、構造、強度、音を出す仕組み、現実的なサイズの割り出し、納期と、工程スケジュール、各工程ごとに依頼する業者、専門家の選定やコストなどについて、何度もじっくり話合いました。こういう前代未聞のでっかい遊びのような仕事は、大人が真剣にやらないとできないものです!(笑)

まず、作品完成時の実寸想定を割り出します。ヘルシェイク矢野はそこそこにイケメンギタリストという設定なので身長を仮に178㎝とします。ギターと映っている図から想像し、一般的なエレキギターのサイズとの相対比を基にして作品のサイズやそれに必要なパーツについて寸法を決めていきました。

*AC部安達さんが持つとこんな感じ

6弦の方は一般的なエレキギターより大き目だが、音を出すという前提のもと、ギリギリ一般的なギターパーツを使えるサイズとして決定。こちらはギターとして作る前提から、まず無塗装のボディーとネックを専門のギター工房に制作を依頼し、その後にパーツ装着(のちに大改造が必要に!)、紙芝居イラスト完全再現のグラフィック・ペイントを施すことに。こちらの材質はなんとギター材として高級な部類のマホガニーで作ってあります!

さらにこんなに非常識な太いネックですが、しっかりとトラスロッドが入っており、調整することができるのです!ヘッドには紙芝居にはない溝が見えてしまいますが、ここはギター構造実現に拘った証として残しました。テンションを考慮し(笑)ヘッド角も付けてあります。もちろんフレットは実際のギターに使用するフレットを打ってあります。

その後イラストに合わせてく黒くペイントしました。問題になったのが、糸巻です。ビジュアルイメージを崩さずに市販のギター弦を張る場合どう工夫すれば可能なのか。熟考したうえで、結果的に市販のギターペグを使用しながらも、ペグボタンの部分をシャフトから切り離し、専用の調整用レンチを開発!して巻けるように改造しました。楽器業界では思いもよらない匠の発想力と技が発揮されました。

弦はイラスト通り黒色にするため、DRのBlackcoated弦を使用。音を拾うピックアップは一般的なエレキギターの物を使用しましたが、広い弦幅ギリギリまで対応するために、ツインブレードバータイプのピックアップを採用。もちろん正面はイラストイメージを崩さないように、アクリルで作ったヘルシェイク用ピックアップパーツの下に隠すように配置してありますので見えないようになっています。

アッセンブリーは2PUに合わせて、ボリュームx2、マスタートーンx1として配線してあり、しっかりと作動します。重量は7Kg程度です。

さて、問題は除夜のギターです!?108弦のギターが完成したら、世界初となります(多分)正に前代未聞のプロジェクトです。(ギネス申請も検討されましたが、AC部と相談した上で辞めました・・・笑)


まず全長はどう割り出すべきか。紙芝居ではヘルシェイク矢野が持っている108弦ギターのボトム一片が床についており、弾こうとする右手がようやくボディ中央部に付くかつかないかといった感じになっています。ここから身長対比で120㎝、135㎝と想定したのち、アクリルシートで型紙を作り、実際に持ってみたうえで135㎝に決定しました。

*写真のモデル身長183㎝

こちらは架空のギター?ゆえ、一般的なギター工房で作れるという代物ではなく、完全にゼロから、解決しなければいけない複数の条件を考慮しながら設計し、作りながら修正していかなければいけません。こちらは木工から新潟で作りました。ここでは伴さんの信頼するオブジェ製作の匠である(この方も知る人ぞ知る)チャックさんの在籍する(株)三隆工芸さんの力をお借りしました。

6弦に比べて巨大となるこちらは、重量のコントロールも重要です。アートピースとして展示されると、AC部さんやお客様がヘルシェイク矢野のように持って撮影したり、弾いたりするかもしれないと想像し、木工加工の工程時から、構造上の耐性を保ちながらも可能な限り軽量化を図り、尚且つ、持ちやすい工夫もしてもらいました。

それでも重量は21Kg程度になりました。

ギターとして考えると、108本も弦を張ったら構造上その張力に耐えられないというの自明です。又、全長135㎝のギターに張れる長さの弦も存在しません。それになにより基となるイメージでは、108本の弦に対して糸巻は8つだけです!(爆笑)しかし、何としても音が出る楽器の構造を持ったアートピースとして作りたい。そこで、考えついたのがクラシックギターのガット弦のような張力の弱いもので、なおかつ長さが担保できるものを張ること。そしてそれをエレアコ(エレクトリックアコースティックギター)に使用する圧電式ピエゾピックアップで振動を拾う構造にするということでした。

結果的に、弦としたものはカジキマグロ用の釣り糸!です。それに対するピエゾPUは8つを並列使用し、こちらも紙芝居イメージを表現したパーツの下に配置しました。

さらに、どちらのギターも課題だったのは、規格外サイズのためにブリッジやネックプレートなどの合うパーツが存在しないことです。ここでは、サイズを綿密に計算したのちに、燕三条の匠である(株)ヤマトキ製作所の小林社長に協力を依頼し、一品だけの特別注文製作をしてもらえる工場を探して製作していただきました。

高品質な金属加工においては日本が誇る”燕三条”の力がこのプロジェクトでも活かされています!

最終工程はアートとして重要なグラフィックペイントです。上記の複雑な構造を持ちながらも、どこから見てもあのヘルシェイク矢野紙芝居に出てきた、あのギターに見えるようにする。ここでは達人チャックさんの技が活かされました。AC部安達さんの筆のタッチによるファジーな線の感じまで再現された完璧な仕事です。これを見たAC部の皆さんも「表から撮影すると紙にしか見えない(笑)」と驚いていました。後にこれは通称#アニメ塗りと命名され、ハッシュタグもできました。

完成後の発送も大変でした。正に美術品運搬のレベルでチャーター便での輸送になりました。

この様に、『AC-bu | MoBA-現代美術館展』にて展示された、ヘルシェイク矢野ギター2体は、新潟の匠たちが関わった、達人の技がつまった重厚なアートピースなのです!今後これを使ったインスタレーションなどに発展していくかなど、とても楽しみです。

AC部とコラボレーションができたのは最高の経験でした。

そして、これからも続きます。。。

追伸:

「除夜のギター」に関するTweetは完全にバズりました。まだまだ反響は続いています。某有名ニュース番組から取材問い合わせもありました(都合で流れましたが)



海外でもニュースになっています

https://www.animenewsnetwork.com/interest/2023-01-05/thundercat-wont-let-you-stop-thinking-about-hellshake-yano/.193567

1/9に終了した『AC-bu | MoBA-現代美術館展』は大盛況の内に終了し、三越コンテンポラリーギャラリーの歴代入場記録1位を更新!(2位も以前のAC部個展)

ラストは入場制限が出て並んで待っている人も多くいらっしゃいました。

現代アーティストとしてのAC部の今後の活躍に更なる期待が持てますね!

【AC-bu | MoBA -現代美術館展- Museum of BOB ART EXHIBITION 】の様子が3Dで観れます!
https://my.matterport.com/show/?m=4RAixH3M2wn&brand=1&qs=0&dh=0

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