木を見る目
注文家具の工房を始めて35年程。これまで国産材を主に使い、家具を製作してきました。
乾燥材だけでなく丸太でも仕入れ、製材に立ち会い、自ら干して、何年も寝かせる。
さまざまな木に触れ、切り、削り、組み、塗る。
そして、年月を経た家具と再び出会う。
木は、同じ樹種でも一本一本で表情が異なります。
色味、木目、硬さ、重さ、動き、響き。
同じ丸太でも、部位や製材方法によって性質は変わります。
そうした時間の積み重ねの中で、木という素材を見る感覚を養ってきました。
どの木がどのような表情を持ち、どのように活かすべきか。
長年木と向き合う中で培ってきたその感覚は、目に見える美しさだけでなく、手に触れたときの質感や、かたちになったときの佇まいにまで及んでいます。
木の個性を見極め、その魅力を引き出すこと。
それが、ものづくりに向き合ううえで、今も変わらず大切にしていることです。
材を選び、音へ
楽器をつくるようになってからは、家具とはまた違う視点で木を見るようになりました。
美しさだけではなく、響き、剛性、安定性。
一つひとつの材が持つ個性を確かめながら、楽器に適した木を選んでいます。
栗、鬼胡桃、槐、栓、栴檀、トネリコ、桜、欅、桑、真樺、柿、屋久栂、水楢、栃などの国産材。
ローズウッド、黒檀、ウエンジ、鉄刀木、ゼブラウッド、ボコテ、ブビンガ、オリーブなどのエキゾチックウッド。
ボディには美しさと響きを。
ネックには、それに加えて剛性と安定性を。
着色や厚い塗装で木を覆うのではなく、
その木が持つ本来の表情を活かす。
木の個性を、音の個性へ。
これが、MARU BASSの材選びにある考え方です。
木の個性を、
音の個性へ。
手を入れて仕上げる
基本的な木工の設備や技術については、これまでの家具製作で培ってきたものがあります。
一方で、楽器には家具とは異なる細かな要点があり、まだまだ学ぶことは多いと感じています。必要な専門工具を探し、時には自ら工夫して作りながら、少しずつ楽器づくりの環境を整えています。
ネックやボディの成形では、機械で大まかに加工した後、鉋やヤスリを使い、手で触れたり身体に当てたりしながら形を確かめていきます。
設計時の型はあくまで目安として使い、最終的な形は手加工で仕上げるため、シェイプやコンターには一台ごとの違いが生まれます。
最後は丁寧にサンディングを施し、手にしたときの感触まで確かめながら仕上げています。
塗装には主にオイルウレタンを使用し、ガラス塗料や拭き漆を用いることもあります。
なかでも拭き漆は、長年家具に施してきた技法のひとつ。
木目を活かしながら、しっとりとした手触りに仕上がります。
個性的で、使われる楽器へ
電装系は現在、できるだけシンプルに。
ノイズ対策を必要としない構成を選び、アクティブピックアップを多くのモデルで使用しています。
目指しているのは、ただ個性的なだけの楽器ではありません。
一台ごとの手加工による違いや、木材の表情、手にしたときの感触。
そうした個性を持ちながらも、実際に演奏する人にとって使いやすく、長く付き合える楽器であること。
個性的でありながら、誰かにとってのメイン器になれる。
そんな楽器を、一台ずつ丁寧に作っていきたいと考えています。