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Factory Tour

アメリカ、ワシントン州の州都“オリンピア”の郊外、オリンピア空港の程近くに佇むギター工房、そうここで“Nashguitars”の全てのギター&ベースが作られています。

音楽業界の中心地ロスアンゼルスで生まれ育ったオーナー件ビルダー“Bill Nash(ビル・ナッシュ)”は、幼い頃より本物の音楽に触れる環境で育ち、楽器の売買や修理改造、自らもバンドで活動していたことから多くのビンテージギターと呼ばれる50年代〜70年代のギターのサウンドと傷ついたルックス、フィーリングを実体験から得ました。
当初は自分の使うギターとしてあくまで個人的に製作を行っていましたが、そのギターが話題となり2001年に“Nashguitars”を設立しました。

この工房にはオーナー:ビル・ナッシュ、生産管理を行うナッシュ夫人を含め8-9人の少数精鋭のスタッフが働いています。
全てのビルダーがギター&ベース・プレイヤーであり“自分達が所有したくない、演奏したくない楽器は出荷しない”というポリシーの元に徹底して“音楽的な”ギター&ベースがハンドビルドにより製作されてます。

設立当初はFenderライセンスのいくつかのサプライヤーからの材を使用し製作されていましたが、現在は“Nashguitars”専用に加工された、厳選し充分にシーズニングされた上質な木材だけが使用されてます。
もともとロスアンゼルスで生まれ育ったビル・ナッシュ氏が、わざわざこの地に工房を設立したのは、カナダとの国境線に近く良質な材が手に入り、優秀なパーツサプライヤー、ピックアップメーカーが集まるということが理由でもあります。

←エイジング前のパーツとエイジング後→
のパーツ群。

通常は左のようにキレイに整理されていますが、右のエイジング後の画像は、今回のためにわざとアーティスティックに並べてくれました。

ずらっとピックアップが並んでます。左はNashguitars専用に巻かれた同じくワシントン州にあるハンドワウンディング・ピックアップ・メーカー“JasonLollar”の各種ピックアップ。

入荷時点ではエイジド加工されていないのがわかります。

←Nashguitarsのサーキット。CTS Pots、CRL Switches, Switchcraft Jacks、Sprague Orange-Drop Cap と世界標準の高品位パーツを使用し、Nashguitarsではサウンドを重視しているため配線材も必要最低限の長さで専門スタッフにより丁寧に半田づけされています。
左は半田ごて。絵になってます。

ちょっと休憩...  ん!? 

←USAビルダー御用達のH.Behlenの目止め材をぬりぬりしているところ。その後丁寧に剥ぎ取ります。塗る姿がかっこいい(笑)

塗装ブースへ潜入。
クラックが入りにくいほどの極薄で仕上げられる“Nashguitars”の塗装。材が本来持つトーン、鳴りを生かしています。
“Nashguitars”では、同じカラーでも年代、エイジングレベルによって退色具合や色焼具合を再現するように若干変えているとの事。→

←塗装後の乾燥室。
音楽が流れる空間で眠っているかのようなボディたち...
職人さんにドヤ顔お願いしてパシャリ。

ネックセクションへ。
擦り合わせ、フレット端の処理など1本1本丁寧に仕上げています。
『Nashguitarsはネックの握り心地が違う!!』と言っていただくことが多いですが、他のエイジドブランドや本家に比べても握った感じは本当に違います。
右の2枚の画像は、ビルの息子さんがエイジドを手がけているという本物のGibson LPにエイジングとカスタマイズを施した“Aged and customized Les Pauls”→

←↓工具や作業台などなど、ところどころにアートとユーモアを感じます。このあたりのセンスが“Nashguitars”の魅力につながっているのかもしれません。
ちなみにエイジングの秘密は...教えてもらえませんでした(笑)
そこはさすがに企業秘密のようです。

壁には アーティストネームがずらり!!
“Nashguitars”ではエンドースはしていないとの事、全てアーティスト本人やテック、エンジニアetc...が購入しています。↓

Interview

ビルナッシュへのインタビュー(2012.10.24)

 
 
Apollon(以下A):自己紹介をおねがいします。
BillNash(以下BN):私はビル・ナッシュです。Nash Guitarsの経営者です。私の会社では、息子や妻、そして数名従業員がおり、その多くはギタリストです。
 

A:ギタービルダーになった経緯を聞かせてください。
BN:父がミュージシャンでしたし、音楽的な環境がある家庭に育ちました。
若い時にバンドでプレイをしていた頃、自分のギターのサウンドや、弾いた感じなどにいつも不満をもっていました。その事に我慢できなくなったのをきかっけに、15歳くらいから自分でパーツを外して変えてみたり、分解したり、穴を開けたり、又組み込み直し、塗装を変えたりということを繰り返すようになりました。
年を重ね、別の職業に就き15年位経ったとき、もう普通のビジネスマンはやりたくない、やはり自分の手を使って好きな仕事をしたいと、ギター・ビルディングに戻ってきました。
 

A: 自分のブランドを立ち上げようと思ったきっかけは?
BN: まず最初に、中古ギターを買い、それを分解し、組み込み直し、フィニッシュを変えるなどしたギターを売るということから始めました。
カスタムギターを作り始めたときは、個人のお客と1:1でオーダーを受け付けていました。最初の頃は今と違って、ピカピカで艶がありいかにも新品というようルックスをしていました。
今のようなエイジド仕上げをする様になったのは、自分のミスから塗装を傷つけてしまった時、ふと見ると意外とカッコいいなと思ったことからです。その後、あえてギター全体に傷やフィニッシュ可能などを施し、ビンテージ風仕上げにして売り出して見たところ、あっという間に売れたことから、こういうニーズがあるなら自分でやろうと決心しました。
もともと子供の頃、モデルカーやモデル飛行機を作り、それを古く見える仕上げにしたり、事故にあったダメージを再現したり、戦争で戦った感じなどを再現する事が好きでした。そして、多くのヴィンテージ・ギターに直接触れる環境に幼い頃からあったことで、エイジド仕上げの方法を自分で習得してきました。

 

A:あなたのギター製作における、哲学、大事にしているポイントは?
BN:ナッシュギターの従業員は全てギタープレイヤーです。
まず我々は、自分達がプレイしたくなるギターしか市場に出しません。我々自身が弾き易いと感じ、サウンドが良いと感じ、見た目が良いと感じるギターを作ることが、最も大切なポイントです。
会社の全員がそれを実現することに対して細心の注意を払っており、常に、作っているギターは我々自身が欲しいと思うものか?と考えながら、誇りをもって働いています。
 

A: 他のギターとの違い、ナッシュならではの個性を作っているコンセプト、秘密はなんですか?
BN: まず、レオ・フェンダーが作ったオリジナル・フェンダーのデザインや製作アプローチなどの多くのコンセプトに影響を受けています。
基本的にはいかに良質の材を使うか。そして、ニトロセルロース・ラッカーを使うこと。オールドスタイルのラッカーはギターのサウンドにとても大きな影響を与えます。
多くのギターメーカーがポリエステル系の塗装を使っています。ポリ塗装はとても硬く、激しいバフ磨きなどの作業もやりやすくて良いし、見た目には綺麗ですが、オーガニックな鳴りとは程遠く、プラスチック的な感じになってしまいます。
我々はポリエステルやプラスチック系のものを一切使わず、オーガニックにするために、ネックは100%ニトロセルロースラッカー、ボディは木の目止め材を施した後にニトロセルロースラッカーで塗装しています。
一本一本自分達の手でプレイしながら、手でサンディングなどの作業をします。

エレクトロニクスもとても重要です。まず、素晴らしいサウンドのピックアップを選び必要があります。ハードウェアやアッセンブリーはビンテージスタイルですが、アップデートしたものを使います。オリジナルのアッセンやハードウェアは現代には少し軽目だと感じます。我々はよりアップデートしたアッセン、よりプレイしやすいフレットにし、いわばOLDとNEWの良い箇所を組み合わせです。

我々の考えは、ギターというものは、よく使い込まれたジーンズのような感覚であるべきです。あなた自身が始めて手に入れ、ずっと履きこみ、何も無理することなく完全に馴染んでいる感覚、いわば旧友のような関係であるべきです。
又、ギターはどんな時でも確実に使用できるものであることが重要だと思います。ある箇所では弾き易いが、他では問題があるとか、このピックアップでは良いサウンドだが、他ではダメだではなく、常にチューンされ、どこでもサウンドが良くなければいけません。私にとってNahguitarsのギターは、1本のギターでどんな時も完璧であることが需要です。
その理由から、しばらくの間JAZZMASTERを生産していませんでした。オリジナル仕様では3時間のショウを確実なチューンでこなせる楽器だとは思えなかったからです。ようやく最近その弱点を解決できたので再生産を始めたところです。
 
A: 使用しているパーツ、材質、PUなどについて聞かせてください。また、なぜそれを選んだのですか?
BN: Nashguitarsで使用している木材は大体、ネック材は太平洋北西部産のメイプル、インディアン・ローズウッドを使用しています。
ギターのボディに関しては、基本的に約2.4Kg以下のものだけを採用しています。
トラスロッドは、オールドファッションなシングル・アクションのものを採用しています。最近のダブルアクションのものは木材を上下に動かす事には長けていますが、金属部が少ないシングルの方がサウンドが良いと考えます。大きな金属が木部に入ることは、それだけ鳴りを殺してしまいます。
金属部のハードウェアは基本的にGOTOHのヴィンテージスタイルのものを使用しています。例えば、テレキャスターのブリッジですが、ヴィンテージスタイルの場合、薄い金属プレートと昔ながらのブラスサドルになっています。昨今チタンなどの高級な材質のブリッジなどがありますが、私の考えでは、薄いブリッジの方がサウンドがワイドになると思います。GOTOHのヴィンテージスタイルは基本的に伝統的な薄いメタルを曲げて作ったもので、そちらの方が私が思うにサウンドが良いと思うからです。

Nashギターに使用するピックアップの90%はJason Lollar製のものです。彼の作るピックアップは特別なものです。彼の工場を訪ねた時に見たのですが、ピックアップの心臓部のメタルに磁力を付加する作業をしていました。ピックアップの特性に応じて、自ら磁力を調整していたのです。ほとんどのピックアップメーカーは、最初から磁力が付加されたメタルを外部業者から買って使っています。
Jason Lollarはピックアップの種類、メタルの種類によって、それに合った金属、時には金属のブレンドによって、それぞれ適正な磁力を付加することがサウンドを良くすることを発見したのです。私はそのクレイジーさに心酔しました。
ピックアップ・コイルの巻きに関しても、少しルーズな方がピックアップの息使いを良くすると思います。コイルをしっかり巻きすぎると、サウンドは表情が無い堅苦しいものになり、個性が出しにくくなります。
ロウ浸けにしても、ピックアップに合わせて種類を変え、含浸時間や圧力についても調整しています。彼の作るピックアップで失望することは絶対にありません。
他にもLindy Fralin , Dimarzio , Duncanなども使用しています。
 
A: 米・英の有名なプロミュージシャンの多くがナッシュを買っていますが、ここまで広まった理由はなんですか?
BN: 多くのギタリストは50年代、60年代のオールドギターを好み、また、所有していますが、それらのとても高価な楽器をツアーに持ち出すのは非情に危険ですし、かといってほとんどのハンドメイドギターも価格がとても高くなっています。
我々のギターは、全ての工程を手作業で行い、ニトロセルロース・ラッカー塗装を採用しているため、その違いを感じてもらっています。
我々と同じようなギターでも、他のメーカーのものはほとんどがカスタムショップレベルの価格になっています。それに比べて我々のギターは価格の点でも有利です。
大きな広告宣伝費や訴訟のための弁護士費用などを控え、出来るだけギター作りそのものに必要なコストだけに抑えるようにすることで、適切な価格設定にするように努力しています。

誰が我々のギターを使っているかというのは、ちょっと面倒な質問です。
我々は誰の名前も使用していません。我々は一切エンドースメントという形を取っていませんし、我々のギターを使っているプレイヤーが他のメーカーとエンドース契約を結んでいるケースも多いからです。
又、有名ギターリストの名前を使って“Nashguitars”という名前をより有名にすることはしないようにしています。もしも、Nashguitarsがその人の4000本持っているうちの一本だとしたら我々が“あのアーティストはNashguitarsを使ってます!”と言ってもそれは本当であり本当でないからです。とはいえ、プレイヤー自身が雑誌やインターネットで「Nashguitarsを使用した。」ということを発言することは止められません。

メタリカ、ブラッド・ペイズリー、ブラック・サバス、ウィルコ、ザ・カルトなどなど多くのプレイヤーと実際仕事をしていますが、それらは私の個人的なものです。
ですが、(Nashguitarsとして)皆さんが想像するよりとても多くの人達が“Nashguitars”を使用しています。
例えばクラシック・ロック・ラジオ局にかかっている曲の、10曲中7~8曲のバンドが“Nashguitars”を買っていると言ってもいいと思います。大きなコンサートで使われたり、有名レコードで使われたりしているのを皆さんも見た事があると思います。それはとても光栄なことと思っています。

そんな関係で最近では、例えばブルース・スプリングスティーンやデフ・レパードなど自分のヒーローや、多く著名人のコンサートに招待され、実際に会うことができてとても嬉しく思っています。
そして、そういった名前を使わないで堅実にやってきたことが、私がここに居られ、“Nashguitars”がここまでやってこれた理由の一つだと思います。
彼らが使う100本のギターの内の1~2本が我々のものだということが幸運に思います。
彼らが、その事をインタビューなどで発言してくれることを感謝しています。皆さんがそれをインターネットやなにかで見る機会があるでしょう。

より細かいミュージシャンの特定をしなくてすみません。ただ、大きなお金などを使わずそういう人達との関係を築けていることを楽しんでいます。
 
A: 日本のギタリストにお勧めしたいポイントは?どのようなタイプのギタリストにお勧めですか?
BN: 日本の市場は我々にとってとても魅力的です。日本人はアメリカの音楽や文化も愛してくれますし、Nash Guitarsを取り巻くものは全てとてもアメリカン的(楽器、音楽として)です。
我々は、ロックンロールやそれを作ったフェンダー・ギターといった古き良きアメリカの時代と完全に繋がるものを作り、提供しています。アメリカの昔ながらの手法で、手作業でアメリカで作っています。

日本の人達はとてもスマートで、いろいろな調査や研究をしており、何が正しいのか、正しくないのか、どうあるべきか、背景に何があるのかなどを理解しています。そういう趣向が、我々の作るものとマッチングすることは自然です。
適切な価格でアメリカ製ハンドメイドギターを所有でき、ユーザーがよりギターそのものを身近に感じ、自然にプレイできるようになることが大切だと思います。
ギターに対して、真摯に向き合っているプレイヤーなら、きっと皆さんNash Guitarsを気に入っていただけることでしょう。プロ・ミュージシャンでも、学生さんでも、どなたでも、音楽を楽しむことの一つのパーツになれることがあれば幸いです。

 

A:あぽろんに対してメッセージを。
BN:あぽろんは私が3番目か4番目に取引を開始した、古い付き合いの会社です。約10年になるでしょうか。いつも会えることを楽しみにしています。私も日本に行き各店舗や、各スタッフを知り、お客様と会う機会もあり、とても良い関係を築けています。
我々はあぽろんとの関係にとてもハッピーですし、これからも良い関係を続けていたいと思います。あぽろんの為だけの特別な限定オリジナルギターも作っています。
 

A:日本のギタリストに対してメッセージを
BN:ハロー!日本のギタリスト達がNash Guitarsを使用してくれていることに感謝します。地球の半分の国の人たちがNash Guitarsを使ってくれている事にも。
私は日本がとても好きで、日本に行った際にも、いろいろなところに旅行したり、日本食を食べたり、日本の人達は皆親切でいつもとても気分が良いです。
多くの友人達と知り合うことができ、彼らと共に過ごすのを楽しんでいます。